地方移住を検討している方へ、田舎の暮らし方ブログ

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移住物語Vol.22 高知県 鈴木 昌樹子さん
鶏や馬とともに営む農耕暮らし

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Vol.22 高知県 鈴木 昌樹子さん

「思えばとおくへきたもんだ」

それは精神的にも、物理的にも。下見・下調べなし、計画性まるでなしの私たちの移住は思ってもみなかったことの連続でした。「偶然は必然」とはよく言ったものでこんなはずじゃ・・・という出来事に遭遇するたびに人に助けられ、土地の魅力に気づき、心身ともに強度が増すようです。気がつけば動物もすっかり増え(犬二猫二鶏五馬一)ここでの暮らしも七年目に入ります。

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伏線が張られたのは二十代の頃。当時私は東京のコミュニティカフェで働いていたのですが、イベントやお客さんで農的暮らしにシフトした人が訪ねてくれることも多く、その方たちのたくましく満たされた表情に「いつかは私も『あちら側に』」という憧れが募っていきました。三十代のはじめに子どもが産まれたとき、仕事柄昼夜逆転に近く夜中に帰ってくる夫と二人、眠る子どもの傍らでこれからの話をするうちに、「いつか『あちら』へ」の「いつか」は今だと感じました。このまま続いていく生活が辿り着く先への漠然とした不安。その頃、バーベキューをしようと言っても火もろくにおこせなかった私たち。「これから先、稼ぐ力よりも生きる力をつけることが私たちにとっても子どもにとっても何よりの財産になる」その思いだけで、突っ走る日々が始まりました。

そして始めの引越しが決まって荷造りをしている時に起こった東日本大震災。計画停電の暗闇の中、訳も分からずロウソクの灯に喜ぶ息子を抱いて黙祷をしながら「この子たちの未来へ生きる力を」との思いをますます強くしました。

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あのロウソクの前でまだ一歳だった息子も、もう九歳になりました。彼の六歳の誕生日に、お祝いとして「火おこしのしごと」を任命しました。今では自分で焚付けを集めてきて風呂を沸かすのもすっかり私より上手になり、誇らしげに「火の仕事」をする息子を見て小さなことだけどひとつクリアできたと感じました。その他にも、毎日の鶏や馬のお世話を通じて見える世界、炭焼き小屋で寝ずの番をするワクワクする夜、田んぼで藁まみれになって転がりまわったり、夏の暑い日は作業着のまま川に浸かりに行ったり、四万十での日々は美しい自然と生活の中に学びが溢れています。

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こうして振り返るとまだ七年しか経ってないのか、とも思います。今も走り続けていますが気持ちとは裏腹に進む速度はカタツムリのごとく。生きる力を持つ先輩たちの姿を直に見ながら試行錯誤の日々です。相変わらず行き先は未知ですが不安ではなくワクワクがあります。だって私たちは今、毎日火起こしからはじまる暮らしをしているのですから。

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出典元:ジャパトラ(一般社団法人住まい教育推進協会)

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鈴木 昌樹子氏

1978年大阪生まれ。2012年2月より四万十市の山間地に家族で移住。田・畑・炭・薪の暮らしを実践中。昨年末、農耕馬を家族に迎え入れ、馬耕への挑戦がはじまったばかりです。

光猫舎
https://hikarinekosya.wordpress.com

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