地方移住を検討している方へ、田舎の暮らし方ブログ

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地域おこし協力隊のその後~なぜ定住しなかったのか(新卒Iターンの場合)~

こんにちは。田舎の暮らし方編集部です。

当サイトにブログを投稿していただいている方の多くは「地域おこし協力隊」の方で、日々の生活や地域での活発な取り組みの様子がうかがえます。「地域おこし協力隊って制度は移住希望者には強い味方だと思う」という言葉に代表されるように、移住の最初の1歩として活用される方も増えてきているようで、平成28年度には約4000人の隊員が約900の自治体で活躍されています。

ただ、全ての協力隊員が任期終了後もその地域に定住しているわけではなく、中には任期終了時に新たな道へ進む方もいるようです。そういった方々は、どのような思いで協力隊員になり、何がきっかけで定住する決断をしなかったのでしょうか。これから地域おこし協力隊になろうと思っている方のために、任期終了後に定住しなかった方にお話を伺いました。

~齋藤 萌さんの場合~

地域おこし協力隊になるまでは?

生まれは山形県の鶴岡市という田舎町です。子供の頃から社会問題に興味がありました。環境問題とか、貧富の格差とか、地方の衰退といったことを学びたくて、慶應義塾大学総合政策学部に入学しました。

入学後、最初は国際的な貧困問題などを学ぶつもりだったのですが、なんだか自分に遠い話かもしれないと思うようになり。もう少し身近な日本の地域と都市について興味が湧いてきたので、地域活性化を扱うゼミに入りました。そこで、のちに移住することになる山梨県富士吉田市と出会いました。

地域おこし協力隊になった経緯は?

富士吉田市には大学3〜4年生の2年間通い、観光や食べ物に関する調査や提案を行いました。実際に、ポスターなどを作って駅や観光案内所に置かせてもったこともあります。卒業する頃に、一緒に研究していた先輩が「これだけ活動したのだから、卒業後も関われるようにしないともったいない。」と市役所の方に掛け合い、地域おこし協力隊を導入する運びとなりました。

もともとは協力隊の制度自体全く知らず、別の就職先も決まっていたのでかなり迷いましたが...。先輩や一緒に就任する仲間の後押しもあり、最後はほぼ勢いで決めました(笑)。就職するより、こっちの方が面白そうかな、という思いで。

1.卒業論文の制作物が完成。.jpg

地域おこし協力隊としての活動は?

まずは大学と連携しながら食や観光のPR をしていこうと活動を始めました。が、学生時代とのギャップを感じることの連続。私にはスキルもやりたいこともないし、ぼんやりとした理想を現実に落とし込んでいくパワーや器用さがない。そんなことを実感する日々で、人間関係も含めうまくいかないことが多く、2年目のはじめに体調を崩してしまいました。でも、それがある意味良いきっかけになり、周囲の助けを得ながら自分のあり方を見直せるようになった気がします。

一緒に移住した仲間は空き家改修を進めたり、財団法人を立ち上げたり、かなりのスピードで事業が進んでいました。そういった周囲で活躍する人や、地域の人のニーズに自分の得意分野がうまく噛み合うようになってきたのが、2 年目の終わり頃。食や農産物の知識を活かして食体験ツアーのコーディネートをしたり、好きな写真撮影や文章作成を生かして財団のイベント告知・運営・記録をしたりと、一人のメンバーとして役割を持てるようになっていました。

差し替え写真.jpg

商工団体との商品開発、アプリや広報媒体の制作進行、定住促進事業のWEB サイト開設、空き家再生飲食店の開業などなど......あらためていろんなことに挑戦させてもらっていましたね。自分の思いを中心に動かしていくというより、誰かの意思を一緒に実現させていくスタイルで精一杯活動することができたように思います。

定住しないことを決めたきっかけは?

定住しないことを決めたのは2年目の最初、体調を崩して休んでいたときです。少しの間地元・山形県で過ごして、やはり地元は唯一の存在だと感じました。富士吉田を「一生過ごす地元」と呼ぶのには少し違和感があった。あとは、東京で働くという経験を一度はしてみたかったこと、家族になりたいと思う人が東京にいたことなども理由です。ときどき帰ったら誰かが「おかえり」と迎えてくれる、そんな"第二の故郷"として富士吉田を大事にしたいと思いました。

現在はどんな生活を送っていますか?

自分が富士吉田という街に対して何ができたか、語ることはできません。ただただ、私にとって貴重な成長の機会をいただいた3年間でした。協力隊を始めた頃よりずっと人の役に立てる場面が増えた、それがただ一つの確かなことです。

協力隊の任期を終えて、私は2016年に47CLUB というベンチャー企業(全国の地方新聞社とともに地域活性などに取り組む会社)に入社しました。そこでは営業業務に就き、協力隊の頃とは全く違った会社という組織のことをたくさん学んでいます。そして2 年目の2017 年4 月からは、新規WEB メディアの立ち上げに携わることになりました。「チイキイロ」という、日本各地の話題を掘り下げていくメディアです(2017 年5 月開設)。自分の好きな地域のこと、身につけてきたことを活かしながら「たくさんの人が"地域"に興味を持ち、好きになる」ことを目指して日々試行錯誤しています。私生活の環境の変化や壁に行き当たること、一つの記事に一喜一憂することもありますが、協力隊の頃のように、そしてそれ以上に一つずつできることを増やしていきたいと思います。

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チイキイロ
https://www.chiikiiro.com/


齋藤さんのお話を伺って最初に感じたことは、地域おこし協力隊としての活動を通じて得られた経験、実感した力不足、困難を乗り越えた成功体験など、一般的な社会で培うキャリアの基礎をしっかりと固めていらっしゃるなということです。ステージが「地方」であり、職業が「地域おこし協力隊」だっただけで、意識さえあればしっかりと社会人としてのキャリアを形成できるのだなと感じました。

一方で、「新卒」の立場でIターンをする、特に「地域おこし協力隊」としてIターンをする際に気をつけたいことのヒントも隠れていると思いました。社会人経験の少ない方々は、齋藤さんのおっしゃるように「スキル不足」を実感すると思いますが、それを環境のせいにして不満を並べるような人には向いていない制度と言えるでしょう。

また、赴任先での環境が、任期終了後に定住させることしか考えていない地域だったら、このような充実した活動にはならなかったでしょうし、定住を断念した後も良好な関係を築くことは難しかったでしょう。任期終了後の定住が前提にあるとはいえ、大切なことは「地域が困っていること、必要としていること」をしっかりと見極め、「自分がどれだけ貢献できるか」を考えることだと思います。

結果として定住はしなかったものの、富士吉田市にとっては、地域で活躍した方が、地域のファンのまま、東京に戻ったことになります。「定住人口」の増加にはならないものの、「関係人口」の増加には確実につながったのではないでしょうか。実際、快く送り出している様子がこちらの記事からも伺えます。赴任先を選ぶ際には、給料や補助金ばかりをみるのではなく、しっかりと地域の本質を見極めることが大切ですね。

地域おこし協力隊をこれから目指す方は、ぜひ参考にしてみてください!

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