地方移住を検討している方へ、田舎の暮らし方ブログ

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110年の歴史がつくる香川県のオリーブ文化と、それを支える人々。

こんにちは。田舎の暮らし方編集部です。

ふるさと納税の返礼品の影響もあってか、地方の特産品への注目度が上がっています。昔から名の知れている特産品もあれば新しくできた特産品もある中で、その背景にある歴史や地域に住む人々の営みについて、多くの方に知ってもらいたいストーリーがたくさん眠っています。

今回は、香川県小豆島の特産品である【オリーブ】を軸に、その生産に携わる方や、それをいかして新たな試みに挑んだ方々を紹介していきます。

小豆島オリーブの歴史
小豆島にオリーブがやってきたのは、明治41年(1908年)のこと。国の施策の一環で、オリーブの栽培を始めようということになり、香川県、三重県、鹿児島県で輸入した苗木を使って試作を行ったのが始まりでした。その中で、香川県小豆島に植えたオリーブだけが実をつけるまで育ち、大正の初めにはオイルが取れるまでになりました。その後も順調に栽培面積は広がり、昭和の時代には香川県の県花・県木にも指定され、今では栽培面積・収穫量ともに日本一。実だけではなく、葉や枝を有効に活用する加工技術は世界も認めるところ。オイルだけではなく、化粧品、加工食品、畜産への活用と、様々な形でオリーブを利用し、様々な品評会で高い評価を得ています。

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オリーブを栽培する人~清岡奈緒さん~
オリーブ栽培、収穫、加工、販売と、一貫した体制で行っている東洋オリーブ株式会社。日本最大規模の自社農園で25,000本ものオリーブの木を所有しています。こちらの農園では一粒一粒を丁寧に選別しながら手作業で摘み取っていて、この小さな粒を1人で1日約50kgも摘んでいくとのこと。実が傷つくとそこから急激に傷んでしまうので、手作業が欠かせません。収穫した良質なオリーブはフレッシュなうちに本社工場へ運び、化学処理を行わずに採油します。

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清岡さんは、2009年に小豆島へ引っ越してきた移住者。きっかけは田舎で働き隊(現・地域おこし協力隊)に応募したことだそうです。神戸の大学を卒業後、名古屋で就職されましたが、瀬戸内の海と青空が広がる小豆島のオリーブ農園で働いてみたいと思いが募り、移住されたそうです。良い果実が実るよう、毎日丁寧にオリーブを栽培されています。

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こちらの東洋オリーブ株式会社の創業は昭和30年。創業当時から「50年先の後世を見据えた栽培」を心がけているそうです。木は植えてすぐに実がなるものではありません。今手摘みしている実も、先代が植えた木があってこそ。目先のことだけでなく、将来を見据えた先人の苦労と熱い思いが畑から伝わってきます。

ブランドハマチの養殖に尽力した人~嶋野文太さん~
実は、世界で初めてハマチの養殖に事業化に成功したのが香川県で、1928年のこと。「ハマチ養殖発祥の地」なのです。その歴史の上に、新たなブランドハマチの養殖に挑もうとした際のコンセプトが「香川県ならではのハマチ」。ただ美味しいだけではない「香川県らしいハマチ」ということで、考案されたのがオリーブの葉入り飼料で育てた【オリーブハマチ】でした。

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当初は、この飼料でハマチの成長に影響が出ないか、期待した効果が得られるかなど、課題もたくさんあったそうで、その研究に尽力したのが庵治地区で養殖業を営む嶋野さん。嶋野さんは父親の代から養殖業を営む、経験と実績を積んだベテランの生産者で、この嶋野さんの飼育していた約6,000尾のハマチを用いて試験が行われたことから開発が始まりました。様々な試行錯誤の結果、粉末にしたオリーブの葉を飼料に混ぜることで酸化・変色しにくくなり、長時間鮮度が保たれる。脂の質も良いため「むつごくない(胸焼けしない)」、また、適度な歯ごたえもうまれ、「香川県ならでは」と「高品質」の両面で成功をおさめました。今では約25万尾が生産されるまでになり、県外へも出荷されています。

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嶋野さんはこの開発への貢献が評価され、第24回東久邇宮国際文化褒賞を受賞されました。

ブランド牛を開発した人~石井正樹さん~
理屈だけではなく、工夫を凝らして苦労の末に開発に成功した方もいます。肉の旨味成分である【オレイン酸】が注目されだした頃、「オレイン酸が豊富に含まれたオリーブで牛を育てたら良いのではないか」と思いついたそうですが、思うように牛が食べてくれません。オリーブの葉の粉末や、オイルを搾油した後の果実を与えてみたものの、牛がそれを舌で避けてしまうのです。石井さんが試行錯誤を重ねる中で思いついたのが「天日で干したらどうだろうか」という発想。これは、渋くても干したら甘みが出る【干し柿】からヒントを得たそうです。試しにオリーブの果実を天日で乾燥させたところ、カラメルのような香ばしい匂いが生まれ、牛に与えると喜んで食べるようになりました。実際に餌を与える場を目の当たりにしましたが、並んだ牛が競い合うようにオリーブが混ざった部分を求めている光景が印象的でした。

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こうして育てられた牛は、2010年5月に香川県発のブランド牛【オリーブ牛】として出荷されました。また、オリーブで育てた副産物として、牛舎特有の臭いも非常に少ないという特徴が挙げられますが、さらに注目したいのが【循環型農業】が成り立っているという点です。オリーブオイルを搾った後の果実(本来は廃棄物)を飼料として牛に与え、その飼料を食べた牛のフンは良質な堆肥となりオリーブ栽培などの土づくりに役立てられています。後から振り返れば美談になるこのストーリーも、石井さんをはじめ、県内の畜産に携わった方々の苦労があってこそ成り立つのです。

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石井さんの牛舎で使用されているオリーブの飼料は、先ほどご紹介した東洋オリーブ社で搾油をされた後の果実だそうです。廃棄物を減らし、経済的にも効率の良い、すばらしい仕組みになっています。

オリーブで化粧品を開発する人~斉藤仁美さん~
小豆島町内で約4,500本のオリーブを育てている農業法人【井上誠耕園】。2017年4月にオープンしたばかりの新施設【らしく園本館】では、オリーブオイルはもちろん、その他の加工品や化粧品などの販売や、美容体験を受けることができます。オリーブオイルには保湿性や抗酸化作用があり、化粧品としても抜群の機能性。特にこの井上誠耕園で開発しているスキンケア商品は、何も混ざっていない天然由来のやさしさが魅力です。斉藤さん自身も小豆島に引っ越してからオリーブオイルのスキンケア商品を使用するようになったそうですが、その質の高さ・機能性にビックリしたとのこと。食べて内面から、塗って外面から、オリーブのパワーでより一層キレイになれるかもしれませんね。

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こちらの【らしく園本館】では、1階のショップで商品をお買い求めいただけるほか、好みのブレンドで自分だけのオリーブオイルがつくれるマイオリーブオイルづくり体験や、スキンケア商品を使ったハンドマッサージ体験ができます。2階は瀬戸内海とオリーブ畑を見下ろせる絶景のカフェレストラン・忠左衛門。オリーブオイルがピッタリの旬の食材を楽しむことができます。

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オリーブ豚を育てる人と提供する人~海部龍次さん、中井和人さん~
オリーブ牛の開発や飼育方法をヒントに研究をしたところ、オリーブは豚の飼育にも適していることがわかりました。オリーブを乾燥させた飼料を与えることで豚の毛ツヤが良くなり、元気で病気になりにくい。生産コストも下がるのでとても効率がよくなります。そして、何よりも美味しさがパワーアップ。旨味と甘味が高まり、口の中で良質な脂がとろけ、あっさりとヘルシーな味わいになりました。海部さんが豚を育てている食品会社【七星食品】では、全体の60%ほどがオリーブ豚、もしくはオリーブ夢豚だそうで、将来的には100%にしたいそうです。美味しくて生産効率も良いならそれも納得ですね。
そんなオリーブ豚を地元で提供している中華料理店【北京】。肉だけでなく、野菜も地元産にこだわった本格中華は、旬の食材を存分に味わうことができます。料理長の中井さんのお話を聞いていて、東京とは考え方が真逆だなと感じました。都内の高級レストランでは、美味しい野菜を全国各地から新鮮なうちに集め、輸送費が上乗せされた料金で提供されますが、中井さんのお店では地元の美味しい野菜を使用するため、無駄な輸送費がかからずリーズナブルに提供できる。地域に根ざすことで様々な恩恵を受けることができるのです。

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オリーブ豚の「むつごくない」サッパリした味わいをいかした酢豚と雲白肉(ウンパイロウ)。中華のしっかりした味つけでもオリーブ豚由来のサッパリ感があるので、箸が止まらなくなること間違いなしです。

オリーブ染めの第一人者~高木加奈子さん~
岡山でアパレル関係の仕事に就いていた小豆島出身の高木さん。日々の仕事で衣服に触れるうちに化学染料で染めることに疑問を抱くようになり、もっとやさしい染色方法を探していくうちにたどり着いたのが草木染めでした。「小豆島のオリーブで染めたら、どんな色になるんだろう」。いつしかそんな思いを抱くようになり、初めてオリーブで染めたときに仕上がった淡いカーキ色と黄色の布を目にしたときに、【あっ、小豆島の色だ】と感じたそうです。

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高木さんはこのオリーブで染めた温かみのある色に【島色】という名をつけ、小豆島の季節や自然、人々の心を色に重ねています。高木さんが開いた工房【木の花】では、草木染めのバッグやワンピース、アクセサリーなどが所狭しと並んでいますが、それらの作品からは高木さんの小豆島への思いが溢れているように感じます。

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特産と特産を融合した人~中武義景さん~
香川県小豆島といえば日本三大そうめんの一つ【小豆島そうめん】が有名ですが、400年前から受け継がれる小豆島のそうめんづくりに、新たな特産がミックスされた【オリーブ生そうめん】はご存知でしょうか。一般的に市販されている乾燥した状態のそうめんではなく、乾かす前の状態のそうめんを【生そうめん】と言います。独特なもちもち感がクセになる生そうめんですが、ここに小豆島ならではの発想でオリーブを融合させたのが【オリーブ生そうめん】です。見た目にも美しい緑の麺。使用されているオリーブは自社農園産のオリーブです。

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これを考案したのが【なかぶ庵】の社長の中武さん。幼い頃、ご自身がお昼ごはんとしてよく食べていた乾かす前のそうめんを再現すべく試行錯誤を重ね、10年がかりで開発しました。そうめんの製造が家業であり、幼い頃からそうめんが身近にあったからこそ生まれた発想。これも歴史と文化の結晶ですね。また、こちらの【なかぶ庵】では、手延べそうめんの製造過程である【箸分け】を体験することができます。麺を細くすることに注がれた先人達の情熱や知恵をぜひ体感してみてください。

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特産品として認知されるまでには、そこに至る歴史や携わる方々の苦労・努力が必ずあります。ぜひ皆さんも、商品そのものを楽しむだけでなく、その背景にも注目してみてください。きっと楽しみ方が変わってくるはずです。

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